令和2年度(2020年)日本語教育能力検定試験試の解説 試験Ⅰ問題4, 5, 6, 7

令和元2年度(2020年)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題4, 5, 6, 7の解説です。問題4では教授法の変遷が、問題5では語彙指導、問題6では中級学習者のコミュニケーション能力育成と中間言語について、問題7でも中間言語/誤用について出題されました。

問題4

教授法の流れ

媒介語を前提とした文法訳読法→媒介語(母語)を認めない直接法→習慣形成によるオーディオリンガル法を経て、コミュニケーション重視の日本語教育に至ったという大きな教授法の流れを押さえておきましょう。

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問1

文法訳読はその名の通り、文法通りに母語に訳す作業ですので、答えは3。1は、クラッセンの仮説の1つ、自然順序仮説。2は多読学習法。4は習慣形成論を背景にしたオーディオリンガルメソッドです。

CHECK!

第二言語習得で考慮すべきクラッシェンの5つの仮説

習得・学習仮説無意識に起こる「習得」と意識的に学ぶ「学習」は相互に独立した過程である
自然順序仮説文法構造はある一定の順序で習得される
モニター仮説学習者の発話は、「学習」によって得られた知識(モニター)を利用し修正される
インプット仮説理解可能なインプットが与えられると「習得」が進む。「i+1」
情意フィルター仮説自信のなさ、不安などの情意面での要因が、インプットの量を左右する

解答:3

問2
直接法では帰納的に理解させます。

演繹えんえき的理解法則を明示的に理解する
帰納的理解複数の具体例から法則を推測する

解答:1

問3

コミュニカティブ・アプローチ
・開発者は特定できない
・コミュニカティブアプローチ(communicative approach/CA)、CLT(Communicative Language Teaching)と呼ばれる
・コミュニカティブ・アプローチは、言語と学習の理論だけで、具体的な技法が示されていない(現場に一任)点で、「コミュニカティブ・メソッド」と呼ばれることはない。
・ウィルキンズ(D.A.Wilkins)は欧州評議会に機能・概念シラバスを提案した(1972)
・ハイムズはコミュニカティブ・コンピテンス(伝達能力)いわゆるコミュニケーション能力を提唱した(1971)
・言語形式や構造より文脈における言語の機能や意味を重視する。(平成2年度検定試験Ⅰ-問題4より引用)

解答:1

問4

ナチュラル・アプローチ
スペイン語教師のテレルが、クラッシェンの第二言語理論仮説(上記参照)を応用して開発した教授法
聴解を優先する(理解可能なインプット)
話すことは強要しない
シラバス

・構造シラバス(文法シラバス)

************

・場面シラバス:「郵便局で」「レストランで」「病院で」etc.
・機能シラバス:「依頼」「勧誘」「許可求め」etc.
・話題シラバス:「家族」「スポーツ」「環境問題」etc.
・技能シラバス:「メールを書く」etc.
・課題シラバス:「幹事になって企画・運営する」etc.
※複数のシラバスを組み合わせる

1 構造シラバス
2 ○
3 発話を促す
4 初級より

解答:2


問5

1 タスクです
2 

全身反応教授法
TPR
Total Physical Response
アッシャー幼児の第一言語の習得過程を参考
聴解優先
教師の命令通りに体を動かす

3 教師がスクリプトを用意し、役も決めていては、タスクとは言えません。
4 文法や機能語を意味のある練習にするための応用練習です。

タスクとは、学習者自身が考えて達成すべき課題のことです。

解答:1

問題5

問1

1 初級/汎用性・高頻度→上級/専門性
2 定型表現は丸暗記します
3 長期記憶には宣言的記憶と手続き的記憶があります。文脈を伴う記憶のことを、宣言的記憶のうち、エピソード記憶といい、記憶を助けます。

長期記憶>宣言的記憶
Knowing What
>意味記憶
>エピソード記憶

↓手続き化

>手続き記憶
Knowing How
統合・自動化

4 初級学習者には、よく使う語から覚えてもらいます。

解答:1

問2

タスクとは、学習者自身が考えて達成すべき課題のことです。

解答:2

問3

1 反義(対義)の関係
2 類義の関係
3 包摂関係(上位と下位の関係)
4 同じ階層にある

解答:3

問4 
ビルが高い↔低い、(スーパーで)たまごが高い↔安いなど、文脈がないと判断できません。

他の選択肢は...
ぼけ、つっこみは名詞でしょう。桜と梅が対語?!不急と火急が対語?!それにどちらも漢語です。

※語種→和語・漢語・外来語・混種語

解答:2

問5

1~3は、意図的学習。
4はクラスで漢字を習うのが意図的学習で、実際の場面で理解が促された(付随的学習)ので補完されたと言えます。

解答:4

問題6

問1
ハイムズが提唱したコミュニケーション能力(伝達能力)を、カナルとスウェインが補足しました。

文法能力話や表現を正確に使用できる能力
談話能力文章、談話における話の組み立てを理解し、構成できる能力
社会言語学的能力社会的習慣に基づいて、場や人間関係にあったコミュニケーションを行う能力
ストラテジー能力コミュニケーション・ストラテジーを使ってコミュニケーションを円滑に行う能力
(回避、言い換え、母語使用あるいは意識的な転移、援助要求、ジェスチャー)
M.Canale & M.Swain

選択肢1はストラテジー能力、2は社会言語学的能力の例です。3は学習者自身の気付きでコミュニケーションではありません。4が談話能力です。

解答:4

問2

タローンはコミュニケーションストラテジーを分類しました。

コミュニケーション・ストラテジー(Tarone)
・回避
・言い換え
・母語使用あるいは意識的な転移
・援助要求
・ジェスチャー

2の母語使用は、コミュニケーション・ストラテジーの1つです。

解答:2

問3
今までの解説からも分かるように、コミュニケーションは誰かに何かを伝えるための手段です。4は自分の中で完結しているのでコミュニケーションではありません。

解答:4

問4

proficiency は日本語で、「熟達」や「習熟」と訳されます。英語の評価表などで見ますね。
言語運用能力と訳されることもあります。場面や状況によって言語を適切に使う能力のことです。

解答:3

問5

語用論的転移(プログマティック・トランスファー)
文法的な誤りはないのですが、自国の社会的文化的規範を第二言語に適用するために母語話者には不自然に聞こえます。
(例1)「一緒に食べませんか」と誘うところを「一緒に食べたいですか」と言ってしまう。
(例2)顧客への謝罪に「ごめん」と言う。

1の「とすると」の後は「帰るしかない」など客観的な表現がきます。2は驚愕が不適当です。語彙選択の誤りです。4は母語を使ったコミュニケーション・ストラテジーの例でむしろ良い例です。
3のような場面では普通は婉曲的に断ります。

解答:3

令和元年度日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ問題10でもコミュニケーション能力、誤用などが問われましたのでご参考まで。

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問題7